February


15日 学校、1日目 終了
 
昨日の夕方(14日)、Whangareiというとても小さな町に到着した。NZに到着して、その景色を見ても、ホストファミリーと対面しても、なぜか興奮することがなかった。ホストファミリーも手馴れたもので、日本人を見ても興奮もしなければ、私という人物像を知ろうともしない。だからといって、別に不愉快な家族というわけではない。まだ二日目だ。じっくりと交友関係を築いていけばいいじゃないか。

今朝、学校へ着くとなぜか興奮がむくりと湧き上がってきた。なぜかというと、こんな歳になって再び学校生活に戻ってしまうからだ。いったいどんな学校生活になるのか楽しみだ。学校のスタッフに連れられて、教室まで歩いていく。教室に入ると、既に生徒数人が予習をしたり談話したりしていた。私は生まれた初めて、転校生気分を味わった。なるほど、転校生とはこのようにちょっとフレッシュで孤独な気分を味わうものなのか。

孤独を味わったのはほんの数分。私はガツガツといろんな人に話かけにいった。教室の3分の一が韓国人、中国人を占めていた。日本人を除くアジア系の人々は、移民の人たちであった。中国人の人はみな明るい。韓国人の人はとてもおとなしい。でも、総じてみな優しい。中国人のビーンさんは、英語を勉強したら、いずれ祖国へ帰るとのことだった。中国ではお医者様を生業としていたらしい。どうりでむちゃくちゃ記憶力がいいと思った。

初日に比べて多少余裕が出てきたのか、周囲の状況がだんだん読めるようになってきた。私がすみ始めたWhangareiは、羊よりも牛が多い。現に、NZに到着してからまだ一頭も羊を目にしていない。平らな高原が広がるのかと思いきや、周囲は山と丘ばかり。丘の急斜面に牛がへばりつくように草を食べている。なんとも不思議な光景だ。さらに、NZの牛は顔が白い。どの牛もみんな顔が白いのだ。体が茶色でも、黒色でも。

なだらかな丘がいくつも見える野原。小さな森ともいってもよいその木々の集合が、眼下に広がる淡い緑の草原に、盛り上がっている。彼方まで目をやると、牛が群れになっているのが見える。その景色は、さながらイギリスの田舎を思い出させるが、よく木々を見てみると、南国に生息しているような大きなシダの葉を茂らせていたりする。近くに寄って見てみると、まるでボルネオのジャングルから一部分だけ切り取ったようなかんじに見える。そんな景色を見てもまだ、私の心は興奮しない。海外で暮らし始めたのだ!という実感がわかないのだ。またすぐでにも日本へ戻るような気分がしてしまうのだ。来週には渋谷のバーでまた飲もう、とか久しぶりに新橋まで飲みに行こうかな、なんてうっかり考えてしまうのだ。どうも、私には覚悟が足りないらしい。それとも、期待するほど物珍しいものがないからなのか?

景色や生活の習慣は、私の知っているアメリカとかなり違う。彼らの話す英語も、私の知っている英語と発音が違う。もちろん、学校の先生だってNZの発音だ。それがいやなわけじゃない。その発音にもずいぶん慣れてきたと思う。しかし、何かが足りないのだ。この生活に、何かが足りない。何かが違う。

何が足りなくて、何が違うのが、知ろうとするのだったら、まだまだ時間がたっぷりある。焦らずにじっくりゆっくり、ここの生活に馴染んでいこうじゃないか。

とりあえず、学校1日目は終了した。
宿題もちゃんとやった。復習もちゃんとやった。
学校の授業は、思ったよりレベルが低かったので、自分で自習でもしないと、今のレベルよりももっと上達するのは難しそうだ。せっかく学校に通っているのだもの、目に見えるような上達がしたい。

明朝は、ホストファミリーのママと一緒に犬の散歩に行く。
犬と猫だけには、モテモテなんだけどねぇ。
 
(つづく)


12日 出発前夜
 

何を隠そう、私はパッキングの鬼である。そう、だから私は出発前日の真夜中になっても、余裕ぶっこいて荷物など詰めもせず、だらだらと酒などを飲んでいた。 

部屋の片付けはとうに諦めた。人間、諦めが肝心なんだ。 
部屋の中は、ちゅうと半端に片付いたまま、信じられない惨状だ。父はそれを見て、「おい、片付けどうするんだ!?」とめんたまを引ん剥いていたが、知ったこっちゃない。きっと帰ってくる頃には自動的に片付いているに違いない。なんて便利な時代。(ちがうだろー!) 

片付かないのは、そこらじゅうにパッキングされるのを待ち構えているお洋服達が散乱しているからだ。こいつをスーツケースに詰め込んでしまえば、きっと少しは片付いたように見えるだろう。私は、詰め込む洋服をベッドに広げ、小さく丸めて網袋に詰め込んでいく。はー。もう11時だ...。もうやりたくない。ボー...。 

ガチャッ!(何もしていないのに、ついビクッとしちゃうんだよねー。) 

ドアが開く。「片付けすんだのか?」あーもー、そればっか。なんで年頃の娘の部屋をノックせずに開けるかなー、この父親は。このちょっかいにパッキングに対する集中力が落ちてしまった。もーいーやー。鼻歌を歌いながらぶらぶらし始める。それを見た母は、「あなた、本当は伊豆に旅行に行くんじゃないの?」と真剣に聞いてきた。祖母は私の旅立ちに興奮して、血圧が上がってしまった。父も落ち着きがない。親戚からも激励の電話がかかってくるし、果ては隣のWDNさん(隣のおばさん)までが餞別まで持ってきた。 

「だいじょぶだいじょぶ。地球は狭いんだから。」 

地球は丸い。そんな大騒ぎしたって、所詮は地球。どこに行ったってぐるっと回れば元に戻ってくるんだから。 

今日は徹夜でHPの更新をしようと心に決めていたけど、まじ、ぜんぜん明日出発って感じがしないなー。気分としては、「また来週!」って感じ。興奮も不安も何もないなー。ただ、「もう片付けはやらなくていい」っていう開放感はでかいなー。 

さらば、片付け!もう片付けることもないだろう! 

そんな気分よ。さー、次にこれを書くときは、知らない国からなんだなー。いろんなこと書くぞ。 

(つづく)


11日 ホラーの余韻
 

切り替えたつもりだったのに、私の頭にはまだ、若干ホラーモードの余韻が残っていた。 

そこで、マンガの山からひっぱりだした、作者の恐怖体験が載っているマンガの数々。いやー、山岸涼子の体験もリアルで怖いんだけど、美村あきのの体験もまじで怖い。山岸涼子は仏教系の知識を要する崇高な恐怖であるのに対し、美村あきのの恐怖は、その体験からは何も推測できない恐怖。ほら、水子だー、幽霊だーってわかりやすいじゃない。でも、彼女は、障子の隙間の上をふと見上げたら、"ぷらん"って手が出てきた、とか、隣のふとんで寝ている友達がうなされていて、そっちを見たら、お坊さんが枕元で正座をして、じっとお友達の顔をのぞきこんでいた、とか。 

そのさー、のぞき込んでいるお坊さんの顔がさー、あんぐりと口を開けて、寝ている人に顔を近づけてじっと見ているわけ。それが怖いんだよねー。それでもー、貞子のことなんて忘れた。 
貞子なんて、過去の女だよ。思い出したくもないね。 

ニュージーランドに行ったら、確認してみたいことはたくさんあるんだけど、外国人の恐怖のイメージっていうのも、確認してみようと思ってる。最初の一ヶ月は学校に通うので、周囲に留学生がいっぱいいること予想される。うまくいけば、韓国人の恐怖、タイ人の恐怖、スイス人の恐怖とかいろいろ聞けるかもしれない。調査結果は、このホームページで紹介しよう。 

私の祖母はまだ健在ですが、彼女は間違いなくホラーです。(彼女の話はまた今度) 
夜中にPCいぢってて、突然鼻血が出るのもホラーだよね。 

はっ。こんなことしている場合じゃないよ。旅の準備しなくちゃー!!! 
片付けるのがイヤだから、この際全部スーツケースにつめちゃおうかな。 

(つづく)


 10日貞子は怖い
 

今日は、都会へ行っていろいろと手続きを済ませたので、なんだかとっても準備を進めた気持ちになった。都会へ出たついでに、もうお家に帰りたくなくなったので、そのまま電車に乗ってふらふらした。 

人が自分に向かってまっしぐらに歩いてくる都会。人が多いですネ、と思いつつ、駅構内を横切る。 

あ!緑の窓口だ! 

そのまま列車の旅がしたくなった。......おいおいおいおいおいおいおい、自分は今週、遥か遠くの南半球へ旅立つんだろーーー?なんで今さら列車の旅なんだよーーー。とかなんとか思いつつ、ひやかしに時刻表などとながめてみる。ふっ。ちょっと前までは、このまま磯辺温泉までぷら〜っと出かけたりしたもんだけどさ。 

そのまま、上野駅とか東京駅の雰囲気を思い出しつつ、歌舞伎町へ。 

ポッキリ殺人事件とか、ベレー帽の探偵とか、いないけど想像してどきどきする。 
そんな街、歌舞伎町。 
実は昨夜、ついでに読んだマンガの最後に、作者の体験した恐怖なるものが描かれていたのだ。それで、今日の私はホラーモードに切り替わっていた。だから、歌舞伎町。だって、怖いんだもん。そのまま、吸い寄せられるように入ってしまったコマ東宝。そして、ついに見てしまった。 
イケナイ映画、『リング 2』 もーーー、ちょーーーこわかったよーーー。でも、どうも私、女優の名前を勘違いしていたようで、未だにヒロインの女の子の名前がわからない。たぶん、中谷美紀。ずーっと あの人が松嶋菜々子(友情出演)だと思ってました。見ているうちに、あ、この人ヒロインだ、とわかりはじめて、次に女子高生役の女の子が出てきて、その子が松嶋菜々子(友情出演)かな、 
と思ったら、また別の女の人が出てきたので、ひょっとしたらこの人かな、とも考えた。 

最後にはそんなのどうでもよくなってきて、もう怖くて怖くて、こんなの独りで観てる自分を、心の中で馬鹿と罵った。 

今日はホラーモードをすっかり堪能した。もう十分だ。明日こそ、準備をきちんとやろう。片付けも終わらせよう。 

あっ!!!郵便局行くの忘れた〜...! 

(つづく) 

      ポッキリ殺人事件 

      以前、歌舞伎町で実際にあった事件。 
      「だんな、3,000円ポッキリだよ!」との言葉につられて入った店で、 
      法外な金額を請求された人物が、命からがら逃げ出し店を出たところ、 
      待ち構えていた車に跳ねられ死亡した、というもの。 
      悪質なボッタクリ事件です。恐ろしいことですね。死にきれませんよ。まったく。 
      ぶー。


 9日 こだわりのマンガたち
 

あー...。 
片付けはまだ終わらない。現実逃避にホームページに励む。おかげで捗った。しかし、何か大事なことを忘れているような気がする...。これでいいのか!? 

1000冊ちかくのマンガは、貴重でないもの、名作でないものに限り処分することにした。ダンボールにつめている最中、ついつい読みふけってしまう。マンガは大体、昔読んだものから順繰りにまた読みなおす。ゆっくり読み進め、700冊目に到達するころには、以前読んだものが再び新鮮に感じたりするものだ。こんな片づけをしていると、どういう心理状態だったのかは知らないが、とんでもないマンガを発見したりする。『蔵六の奇病』とか『ヲホホの園』なんかがいい例だ。『珍遊記』は気が確かな時に買ったので、手放す気になれない。『大日帝国漫画』(原律子作)なんかは、ちょっと惜しい気もするけど、別になくても私の人生は困らないので、処分する。『魔天道ソナタ』なんかは読みなおす気もしない駄作ので、さっさとオサラバしたい。今日一番の嬉しかったことは、ずっと探してた『夢のつづき』(清水玲子作)が見つかったこと。寝る前に読みなおすんだ。内田春菊なんかのシュールなマンガを発見できたのも嬉しかったなー。『伝染るんです』は名作だから、ぜったい手放さない。 

はっ。こんなことをしている場合じゃないんだよー。準備しなくちゃーーー!!! 

日記第一号がこんなんでいいのか!? 乞うご期待!!

(つづく)


 
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