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ニュージーランドは乳製品が美味しい国だ。
前日、マイクに「Kerikeriで農家から直接チーズを買うことができるよ」と言われた。旅の中で、人とのふれあいを何よりも大切にしている私は、ぜひこの農家を訪れ、何か変わった体験がしてみたい!と思ったのだった。農家から新鮮なチーズを直接購入。考えただけでもエキサイティングだ。 Paihiaに到着すると、既にランチタイムだった。しかし、あまりお腹は空いていない。町に行って、美味しいワインを購入し、マイクの言っていたチーズファクトリーに出向いて、ワインと合ったチーズを購入しよう!ということになった。酒屋では、好みの味を伝えて、店員にワインを選んでもらう。ついでにチーズファクトリーがどこにあるか、たずねてみた。すると、「6ヶ月前からここに移り住んだばかりだから、よくわからない」と言われてしまった。若い夫婦に見えるけれど、こんなに気持ちがいい場所で暮らしていこうって決めたりするもんなんだな、などと感心してしまう。 インフォメーションセンターでチーズファクトリーの場所を確認し、そちらへ直進した。
一回見落とし、通り過ぎてから更にUターン。
建物に入る。濃縮した強烈なチーズの匂いが鼻を突く。くさい、そう、くさいよ、ここ。鼻が曲がるよーーー。建物の中はガラス越しに整然と並べられた丸いチーズが右手に見え、手前にはところ狭しと置かれたレジ、左手には並べられたジャムとチーズ切りが展示されていた。レジのところには、 「ご用の方は、左手のベルを鳴らしてください。」 と書かれていた。そちらを向くと、小さな牛ベルが飾られていた。カーン!とクリアな音が建物の中に響く。しばらくすると、白衣を着たショートカットの女性が現れた。背の低いアジア人家族を見て、明らかに戸惑っている様子。 「ホストファーザーから薦められてきました。ここではNZで一番のチーズを売ってるって。」 まぁ、そんなこと言ってくれてうれしいわ、とはにかんだように笑う彼女。年頃は30代半ばというところか。化粧っ気もなく、洗いざらしの髪型もなにやら"チーズ工場で働く女"という感じだ。何がいいでしょうか?と聞かれ、アイディアのない私達は、彼女のお勧めを聞いてみた。 すると、「ああ、いろんなチーズを持ってきますから、味見して決めてみて。濃い味のやつが好き?」 濃いチーズ!いいね。ああ、美味しいチーズを試食。幸せだー。 彼女が丸いチーズを持ってきた。惜しげもなく、試食用のカットに使うのだ。太っ腹!でかい1ピースを私達に手渡す。彼女が持ってきたのは、ゴウダチーズの若いものから9ヶ月ものまで。それぞれ、試食してみたが、満場一致で一番古いチーズが美味しいということになった。母はお土産にとたくさんチーズを買い込む。ふー...。わかる?このため息の意味。 その後、のんびりとドライブをしながらホテルまで戻る。ホテルで、チーズをスライスし、ワインを飲みながら舌鼓を打つ。うーん、いいね。こういうランチもね。父と私は赤ワインのボトルを一本、瞬く間に空けてしまった。母も、一人でKiwiフルーツワインを飲んでいた。私達がボトルを空けたころ、母のボトルは半分になっていた。しかも彼女は顔にも出ないし、酔ってもいなかった。恐るべし、母。 母がお酒を付き合いだしたのはごく最近のことで、それまで私は母がお酒を飲む姿を見たことがなかった。隠された遺伝子。私のお酒好きは母から来ていたのだ!!(注:母は先天性、父は後天性 酒好き) まぁいい。
翌日、私達は近所のチョコレートファクトリーに出向く。
MIYAさんは、私達に、「お昼ご飯がまだだったら」と言って、ファクトリーの近くにある美味しいレストラン数軒を教えてくれた。彼女のイチオシは、ワイナリーが経営する小さなレストランで、このへんじゃあ一番美味しいとのことだった。ぜひ行ってみよう!いいね、こういうの。なんていうの?昔話でこういう話があったでしょう?わらしべ長者だったっけ?次から次へと縁が縁を呼ぶ、みたいな話。私達はワイナリーまで直行した。しばらく走ると、ぶどう畑しかないようなところに"ワイナリー"と書かれている小さな看板を目撃。どこから見てもレストランには見えない建物の中は、天井が高く、壁には暖炉があり、石床の上に黒いテーブルの置いてある、とても落ち着いたレストランだった。すごい!暖炉に火がくべてある!!実は私は炎が好きだ。焚き火マニアと、山岳部の皆さんには言われていたものだ。ええ、確かに私は焚き火に関しちゃ、ちょっとうるさい。火もおこせない男となんか付き合いたくない。 それはおいといて。
両親はブルーチーズ入りのオムレツを注文し、私は卵とかベーコンとかが料理されているブレックファーストを注文した。うーん、美味しい。ワインも美味しいし、食事もうまい!はっ。うまいで思い出したけど、外を散歩中、母が「空気がおいしい」とつぶやいたことがあった。小さい頃、コミック『ドラえもん』の中で、しずかちゃんが「空気がおいしい」などと言っていたけど、まじかー?とよく思ったものだった。大人になって山岳部に入ったとしても、空気がおいしいという感覚はイマイチわからなかった。そして、時が経つにつれて人々も「空気がおいしい」などとは言わなくなった。それを、私の母がなんのためらいもなく「空気がおいしい」とのたまった。私は自分の耳を疑ったばかりではなく、母の舌をも疑った。そして、英語でこれはなんていうの?と聞かれて、"The air is tasty."と自分で言って吹き出した。皆さん!決して英語でこんな言い方はしません!気をつけましょう。(恐らく、"This air refreshes me."というような言い方をすると思いますが、確信が持てません。誰か教えてください。) 話を戻そう。このレストランはとても感じがよく、いつまでもそこにいたくなる雰囲気があった。また行ってみたいな。 レストランを出たあと、一路、オークランドへ。
ホテルのキーは、カード式なのでロビーに預ける必要はない。
私はすぐにホテルのレセプションへ行って、事情を話した。「なにー?そんなことがあるわけないじゃーん。」という顔をしているスタッフも、部屋に電話をしてみて誰も出ないのを確認すると、「一緒に見に行きましょう」と言ってくれた。当たり前だのクラッカーだよ。私達じゃなんとも出来ないんだから。レセプションにいた彼は、確かに内側から鍵がかかっていることを確認すると、「信じられない」という顔をした。「長年このホテルに勤めていますが、こんなことは初めてです。」と彼が言った。中には誰もいないので、下のロビーでしばらくお待ちください。これを開けるにはマスターキーがいるので。と彼が言う。彼はマスターキーを使う権限がないので、マネージャーに来てもらわないといけないのだそうだ。 「死体が転がってるかもよー」 というと、彼は「そんなことはありません(きっぱり)」と答えた。 下のロビーで、私はうきうきしていた。
ずいぶん待たされたが、ようやく先ほどの男性がやってきた。
「ありません(にっこり)」 という答えが返ってきた。冗談だよー。笑ってくれよー。
「何かのはずみでしょう」 彼はあっさりと言い放った。そう...なんかつまんない。もっと鮮やかな解答を待っていたのに。
そして、残りの1日、オークランドを過ごして両親は日本へと帰っていった。
最後の1日のオークランドでは、ちょっとした出会いもあったが、それはまた今度ということで、オフラインミーティング報告を終わりにしたいと思う。 ちなみに、今度とお化けは出たためしがない。 おわり
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